頸髄損傷者のフロントパスにおける動作の考察


キーワード:フロントパス、意識、動作



山下 文弥
(目的):本研究は頸髄損傷者(以下:頸損者)のフロントパス動作の特性および動作中のプレイヤーの意識をもとに残存機能別の動作の特性を明らかにし、現場指導の参考にすることを目的とした。
(方法):対象は、ツインバスケットボールを5年以上行っている頸損者男性53名で、クラス分けにより、上プレイヤー(20名)、円外プレイヤー(12名)、円内プレイヤー(21名)に分類した。動作撮影は、ビデオカメラ(EXILIM・EX:Z400・CASIO社製)を用いて、上部・側部・正面から撮影した。その後、対人パスを行う際に意識する部位、パスをする時のポイント、ボールを保持する際に意識する部位に関する聞き取り調査を14項目行った。
(結果・考察):本研究の結果、対象者全員にフロントパスが可能であった。動作の特性は、上プレイヤーでは、車椅子バスケット選手と同等のパス動作であった。円外プレイヤーではリリースポイントが頭上より低い位置であった。円内プレイヤーでは肘伸展を補う代償動作がみられた。各プレイヤーとも残存機能を活用したパス動作であった。対人パスを行う際のポイントは、上プレイヤーでは、体幹保持、体の部位に意識が強かった。円内・円外プレイヤーでは、反動などの動作への意識が強かった。また、頸損者がフロントパスを行なう場合、全ての対象が上肢末端に意識ポイントを集中させていた。これは、上肢末端の感覚障害の不具合を麻痺部・健側部と連動させ、肘・肩などの感覚器を活用することで情報入力を増徴して、動作に繋げていることが考えられる。以上のことから、指導を行なう際のポイントは、上肢機能の認識向上をさせること、及び、体幹保持動作を指導することが必要である。

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