脊髄損傷者における基礎代謝量と日常生活労作におけるエネルギー代謝率についての一考察〜麻痺域と消費エネルギーの関係より〜


キーワード:脊髄損傷者、基礎代謝、エネルギー代謝率



佐野 千晴
健常者指標と頚髄損傷者(以下頚損者)および胸髄損傷者(以下胸損者)について基礎代謝、安静時代謝、エネルギー代謝率を比較した。一日あたりの基礎代謝量については健常者指標、胸損者群、頚損者群の順で高い値を示した。この差は、運動神経麻痺による筋の廃用性萎縮のために骨格筋の重量が減少することや、自律神経麻痺の影響などによりエネルギー消費量が減少するためであると考えられる。
エネルギー代謝率については、頚損者群、胸損者群、健常者指標の順で高い値を示し、脊髄損傷者(以下脊損者)と健常者との間に有為差が認められた。しかし、各生活労作における時間あたりエネルギー消費量については、頚損者群と胸損者群の平均値に大差は見られなかった。また安静時代謝量についても、健常者指標と頚損者および胸損者の平均値に大差はなかった。脊損者群の基礎代謝が、健常者よりも小さいことを考慮すると、活動のみに消費されるエネルギーは脊損者の方が大きいといえる。また脊、損者は、運動神経麻痺により使われる筋が限られるため、非麻痺域において消費されるエネルギーは健常者よりも大きいことが推定される。

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