脊髄損傷者の麻痺領域を温めることで痙性麻痺は減少するか?


キーワード:脊髄損傷、痙性麻痺、温熱刺激





下溝 麻里奈
痙性麻痺を有する脊髄損傷者7名(平均年齢36.4±11.0歳、損傷レベルTh1〜10)を対象に、麻痺領域(足関節周辺)を温めることで、痙性麻痺や関節の硬さが変化するのか否かを検討した。
フットスチーマーを用いて麻痺下肢の下腿遠位に約42℃の温度で10分間の温熱刺激を与え、近赤外分光装置を用いて温熱中の下腿部の総ヘモグロビン濃度を計測するとともに、実施前後の皮膚表面温度の変化をサーモグラフィにて撮影した。また、温熱刺激の影響を定量的に評価するために、足関節受動運動装置を用いて伸張反射応答と足関節スティフネス(硬さ)の計測を実施した。
筋血流量では温熱刺激の継続に伴って総ヘモグロビン濃度が増加し、サーモグラフィの画像からも皮膚温度の顕著な増加が認められたことから、下腿遠位の麻痺領域の筋血流量は増加したことが分かった。伸張反射応答では、統計上有意な差は得られなかったが、温熱刺激後ではいずれの角速度においても減少する結果であった。また、足関節スティフネスでは、被験者毎に異なる傾向を示し、個人間で一致した増減傾向は認められなかった。
本研究で用いたフットスチーマーは、蒸気で温熱刺激を与える装置であるが、血流促進や伸張反射の減少に効果を示した上に、車いす常用者であっても比較的簡単に足への温熱刺激を実施できることから、在宅での有効なリハビリテーション方策になるものと考えられる。

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