脊髄損傷者の心の健康とその関連要因について


キーワード:メンタルヘルス関連QOL尺度(MQS)、脊髄損傷



許 宗秀
目的:近年、脊損者の死亡原因は、呼吸循環器への影響と自殺など心の問題が大きくなっている。他にはアルコール中毒などが注目の対象である。これらは、身体的機能の損失による直接的影響よりは、むしろ心理的・精神的影響とそれに伴う不適応による。しかし、このような現状にも関わらず、日常生活を永く営む脊傷者の心の健康については、詳しく調べられていない。そこで、本研究は脊損者が永続的に健康な生活を送るために、心の状態と日常生活のどのような因子が関係しているのかを明らかにすることを目的とした。
方法:対象は、K病院を退院した脊損者103例でそのうち有効回答が得られた88例(男性71例、女性17例:四肢麻痺45例、対麻痺43例)を対象とした。質問紙法は脊髄損傷者の方の健康状況調査とメンタルヘルス関連QOL尺度(MQS)を用いて健康的な生活を営む上でのポジティブな要因およびネガティブな要因に分類し検討した。
結果・考察:損傷レベルによる影響は、先行研究と同様に損傷高位の方が心の健康が低下しネガティブ傾向であった。ADL上では「入浴で介助が必要」、「整容の介助が必要」と「車椅子とベッドの間移動で介助が必要」がネガティブに作用した。また、ADL上の介助の因子は「少しでも自分でできる」状況がネガティブに作用した。従来の報告でネガティブな因子とされる排尿、排便は「排尿、排便管理で介助が必要」、「排便が毎日ない」、「便意がある」が心の健康に関連していた。社会性については、「一人暮らし」で日常生活を送ること、また、家族と一緒に暮らしていても「会話がない」ことがネガティブに作用する。以上のことより、脊損者の心の健康をよりネガティブに作用する因子は、「損傷レベル」「ADLの介助度」「社会性」であることが示唆された。このことから,@損傷レベルでは高位の脊損者ほど、心の健康に注意が必要 AADL上では、グレーゾーンが多いことが問題であり、スポーツを通して身体機能を再確認することが必要ではないだろうか。Bスポーツの特性を活かし、コミュニケーション能力をはかることで、社会性の向上が導ける。

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