質問紙法による脊髄損傷者の生活習慣病について〜健康管理とその介入について〜


キーワード:脊髄損傷者、生活習慣病、運動



田中 亜美
目的:近年、健常者では、過食や運動不足に起因する生活習慣病が増加しており、障害者においても同様に生活習慣病の増加が懸念されている。しかし、障害者の健康について問題視されながらも、具体的な予防・治療法については不明な点が多い。特に、運動の実施における具体的な取り組みは行われていないのが現状である。そこで本研究は、日常生活での定期的な運動の実施が、脊髄損傷者(以下、脊損者)の生活習慣病、二次障害および生活スタイルに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
方法:2006年1月に、生活習慣病・二次障害および現在の生活スタイルについて、Kリハビリテーションセンター病院元入院患者、Iセンター修了者、Bセンター修了者に郵送によるアンケート調査、「脊髄損傷者の方の健康状態調査」を実施した。その調査で、運動状況による項目を回答した脊損者782名を対象とした。彼らを「運動している群(以下、E群)」と「運動していない群(以下、C群)」に分類し検討した。
結果・考察:C群は、「生活習慣病である」(p<0.01)、「高脂血症」が有意に高かった(p<0.05)。また、喫煙状況もC群が有意に高かった(p<0.01)。一方、E群では、「疼痛」が有意に高かった(p<0.01)。E群の運動実施目的では、「リハビリテーション」が29%と最も多い回答であった。「運動強度について気にしているか」という項目では、38%が「その日の体調による」と回答しており、37%は「気にしていない」ことが分かった。
脊損者は、麻痺障害に起因する活動量の低下から、不健康の悪循環に陥っていることが報告されており、本研究の結果からも、運動していない生活スタイルが、高脂血症に由来する生活習慣病の発生を助長させていることが示唆された。一方で、E群の多くが、「リハビリテーション」を思動の目的としており、更に、運動強度も「気にしていない」と言う現状が、医学的リハビリテーションを長期間継続し、訓練的な運動の実施が疼痛を増強させていることも否定できない。

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