慢性期脊髄損傷者の心の健康とその関連要因について


キーワード:メンタルヘルス関連QOL尺度(MQS)、脊髄損傷、運動実施



内藤 舞
目的: 近年、救命救急など医療技術の進歩が、障害の重度化や平均余命の延長による高齢化を進めている。しかし、病院を退院し、永年、日常生活を営む慢性期脊髄損傷者(以下、脊損者)の心の健康については、従来から問題視されながら、不明な点が多い。そこで本研究は、脊損者が永続的に健康な心の状態を維持するために、日常生活のどのような因子が関係しているのかを明らかにすることを目的とした。
方法:対象は、Aセンター病院を退院し、10年以上、日常生活を営んでいる脊損者45例(男性33例、女性7例、性別未記入5例、受傷後経過平均23.9±4.2年)であった。方法は、2種類の質問紙を用いて、健康的な生活を営む上でのポジティブな要因およびネガティブな要因に分類し、検討した。
結果・考察:ポジティブな要因は、「疼痛がある」、「排尿管理において介助を受けている」、「運動している」、「外食をする」であった。一方、ネガティブな要因は、「受傷部位がL1以下である」、「肥満である」、「痛みやしびれがある」、「親と暮らしている」、「日中排尿回数が10回以上である」であった。運動することが心の健康の向上に関連している要因は、「疼痛がある」、「日中排尿回数が6回以上または7回以上である」であった。また、運動しないことが心の健康の低下に関連している要因は、「肥満である」、「一人で暮らしている」であった。
以上のことより、永続的に日常生活を営む脊損者の心の健康に大きく作用する因子は、運動実施の有無、良好な排泄コントロール、生活形態や周囲のサポートなどの社会性が関連し合っていることが明らかとなった。しかし、脊損者の心の健康に関連する要因は、不明確なことが多く、今後さらに研究を深めていく必要があると考えられる。

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