精神障害者のリハビリテーションにおけるスポーツの効用−種目の特性が統合失調症患者の心理に及ぼす影響に着目して−


キーワード:統合失調、スポーツ種目、POMS



内池 深咲
本研究は、統合失調症患者のリハビリテーション過程において、スポーツを行なうことが心理的側面にどのような影響を及ぼすのかを、種目間の比較を通して明らかにすることを目的とし、感情プロフィール検査(POMS)を用いて調査を実施した。調査内容は、3名の統合失調症患者に、ボッチャと円陣ソフトバレーボールを行なってもらい、各活動の前後にPOMSによって気分状態を測定した。その結果、低運動強度で対人種目であるボッチャの活動後は、活動前に比べて、3名ともに全陰性項目の低下がみられた。一方、高運動強度で集団種目である円陣ソフトバレー活動後は、活動前に比べて陰性項目の上昇がみられ、妄想や興奮状態を呈した被検者もいた。また、活動前後で低下した陰性項目もあったが、その低下量はボッチャよりも少なかった。このような結果の要因としては、ボッチャでは小人数でのコミュニケーションや、自身の活動場所が保証されていることにより安心感を持って活動できたのに対し、バレーボールでは集団でのコミュニケーションが要求されることや、長時間の集中力や緊張感が被検者に過度のストレスとなったこと等が考えられる。統合失調症患者における一過性のスポーツの効果としては、低強度の対人種目は陰性症状の軽減が期待でき、高強度の集団種目は陰性症状の増幅や興奮状態の誘発等、精神状態を悪化させる可能性が比較的高いことが明らかとなった。

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