「天井吊り下げ型歩行支援システム(フローラ)」を用いた免荷歩行時のエネルギー効率に関する検討


キーワード:歩行 エネルギー効率 BWS



江草 朋樹
近年、臥床による身体への悪影響が認識され、リハビリテーション早期から立位や歩行訓練が取り組まれるようになってきた。そのうち部分的体重支持付トレッドミル訓練(treadmill training with partial body-weight support:以下BWS)は、脳血管障害片麻痺患者ら、歩行に障害を持つ者を対象に取り組まれ、そのトレーニング効果についていくつかの報告がなされている5)。立位や歩行の効果は、骨代謝の改善、抗重力筋の萎縮予防、循環器など好影響を与え、また、身体をワイヤーで吊り下げる為、転倒による2次障害の発生が極めて少なくなる。また、BWSは、対象者の筋力や循環機能の回復に合わせた荷重が可能となる。天井吊り下げ型歩行支援システム「フローラ」を用いたBWSでは、従来のBWSが一定の場所での歩行訓練であるのに対し、設置環境範囲内であれば本人の意思で自由に歩くことが可能となる。
そこで、本研究では、フローラを用いた歩行運動プログラムを作成する基礎資料を得る為に、健常者を対象とした一定速度免荷歩行時のエネルギー効率について検討した。
被検者は、健康な学生5名(男性3名、女性2名)であった。トレッドミル上で速度2km/hに固定し、時間15分間の固定運動負荷試験は、非免荷歩行(以下FWB)及び免荷歩行(以下BWS)をおこなった。免荷量は、体重及び靴、吊り下げ装具を装着した総重量の約70%とした。座位安静3分及び各運動負荷試験中に、酸素摂取量(VO2)、換気量(VE)、心拍数(HR)、血中乳酸濃度(LA)、Borgの主観的運動強度(RPE)を測定した。
測定の結果、測定項目全てに定常状態が認められたが、FWB及びBWS間にエネルギー効率に有意差は認められなかった。Danielsonら1) は、片麻痺者及び健常者を対象とした30%BWSでFWBよりも有意にエネルギー効率は向上すると報告している。Finchらの2)筋電図学的研究からは、70%BWSでは、通常の歩行に比べ、歩行効率に影響を及ぼすデータを示している。つまり、本研究の結果から、低速度でしかも高いBWSを行うことでは歩行時の筋活動パターンが変化し、エネルギー消費に影響を与えていることが考えられた。今後はさらに、フローラの特性を活かした研究を進めていく必要がある。

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